先日行われたUFC260
ヘビー級タイトルマッチ
スティーペ・ミオシッチvsフランシス・ガヌーの再戦
結果はフランシス・ガヌーの2R、KO勝ち
① 簡単な選手紹介
・王者 スティーペ・ミオシッチ
ボクシングとレスリングを上手く使ったスタイルの持ち主
基本的にはボクシングで勝つことが前提のような戦い方をするが、拘ってるわけではなく、相手や状況によってはレスリングを使ってポイント勝ちを狙ったり、組み伏せて寝技をコントロールする事を目指したり、総合力のある選手独特の相手の持ち味を潰すクレバーな戦い方ができる選手だ。
5ラウンド戦えるスタミナを持ち、スピードもパワーも優れていて、ボクシング、レスリング、共に高い水準の技術を兼ね備え、それらを状況に応じて使い分ける格闘IQの高さ。
現在のヘビー級で最も総合力が高い選手と言っていいだろう。
・挑戦者 フランシス・ガヌー
UFC最強の剛腕の持ち主
当たれば死ぬ
まさに一撃必殺を体現した存在、それがプレデターの異名を持つフランシス・ガヌーだ。
ここ最近の試合は全てKO、TKOで勝利。そりゃこのパンチが当たれば倒れる。
ファイトスタイルは打撃でガンガン押してくるスタイル。
前回のホーゼンストライク戦では丁寧にローキックから入ったホーゼンストライクに対して左右のフックをブンブン振り回して前進して勝ってしまった。
前進するガヌーを、ローとカウンターのフックで止めようとするホーゼンストライクだが、そのままガヌーのフックの嵐に飲み込まれてしまった。
テクニックはないが、あのパワー、あのスピードを、あの身体能力で振り回す事で全てを解決している。
あのフィジカルを前にしてまともにゲームプランを遂行できる人は少ないだろう。
(ガヌーの衝撃KOシーン。怪物アリスター・オーフレイムにアッパーで失神させるガヌー。)(画像はUFC公式Instagramから)
② 試合前の展開予想
正直、ガヌーが勝ちそうな予感はあった。
しかし、前戦のホーゼンストライク戦で見せたテクニックも何もない、扇風機のような戦い方を見て、『あ、こいつフィジカルだけなんやな』って言うのが正直な感想だった。
対するミオシッチはレスリングの猛者ダニエル・コーミエを相手にフルラウンドの判定勝ち。
レスリングでもコーミエに引けを取っていなかった。
これだけ、優れたボクシング技術とレスリング技術を持ち、スタミナもあって格闘IQの高さを持つミオシッチでも、ホーゼンストライク戦で見せたガヌーのKOパワーに飲み込まれてしまうんじゃないのか?と思いつつも、やはり前回のようにミオシッチが技で力を制する展開も十分考えられた。
筆者個人としてはミオシッチ負けそうやけど、勝って欲しいと思っていたが、現実は無惨にも希望を粉砕してくる。
③ 試合展開
前戦のホーゼンストライク戦で見せた戦い方と別人のような戦い方をするガヌーに心底驚かされた。
あれだけ扇風機のように振り回していたガヌーがきちんとガードを上げて、今流行りのカーフキックを蹴っていくという立ち上がり。
さらにボディから顔面と打ち分けてくるガヌー。
これにはミオシッチも驚かされただろう。
何せあのフィジカルでテクニックを使いながら戦略を立てて襲ってくるのだからたまったものじゃない。
ミオシッチもタックルで攻勢に出るが、前回と違いキッチリ防ぎ、なんならバックに回ってミオシッチを崩して後ろからパンチを打ち込んでいく。
レスリングでも前回ほど負けていなかったのはミオシッチに取って大きな誤算だったろう。
剛腕に注意しているとカーフを蹴ってくるし、意識を足に向けると顔面に剛腕が飛んでくるうえに、タックルに行っても切られる。
まさに八方塞がりとなったミオシッチに2ラウンド、逆ワンツーでガヌーがダウンを奪う。
立ち上がったミオシッチがトドメを刺しにきたガヌーに右のカウンターを撃ち込んで前進していく。
(前に出てきたガヌーにカウンターの右を当てるミオシッチ。)
しかし、ガヌーはカウンターを当てられても全く下がらず、前に出てきたミオシッチにカウンターの左フックを叩き込みKO勝ち。
この倒れ方を見て、本気でミオシッチ死んだと思いました。
いや、あれは絶対死んだよ。
倒れ方が生き物が死んだ時のような倒れ方だったもん。
とにかくとんでもないパワーのパンチをカウンターで貰ってしまったなと。
④ 感想
ミオシッチの負けは残念だった。
技が力を凌駕するのを期待していただけに、やられてしまったなと。
しかし、これでガヌーの政権が始まると思うとワクワクする。
ミオシッチの敗戦は残念だったがこれからの展開がとても楽しみである。
このザ・ヘビー級という感じのガヌーがどれだけの長期政権を築くか見ものである。
個人的には、よっぽどメンタル調整を失敗して1発貰わなければ負けることはないんじゃないかなと思う。
それだけ今回の内容は完璧だった。
あのフィジカルでプレッシャーをかけられたら下がるしかないし、その上きちんとテクニックを兼ね備え始めている。
戦略通りに動けるし何よりテイクダウンディフェンスもしっかり身についている。
まぁ〜ミオシッチが無理なら他の選手も厳しいやろう。
あの、人以上獣未満のフィジカルにテクニックが融合し始めてるガヌーを止めれるファイターはおそらくジョン・ジョーンズくらいだろう。
もし、ジョン・ジョーンズがライトヘビー級と遜色ない動きができるなら勝てるだろうが、ガヌーが今以上に洗練されたらジョーンズでも厳しいと思う。それくらい今回の勝ち方は素晴らしかった。
ただ、まだまだ自分の身体を使いこなせてないように見えた。
蹴りやバックハンドブローを打った時の身体の流れ方がかなりバランス悪かった。
以前よりは良くなっているが、あの大きさで、あのパワーとあのスピードを制御するのはとても難しいんだろうなと思う。
ジョーンズやミオシッチのように先にテクニックをつけて、そこから洗練しながらフィジカルを作っていくという鍛え方ではなかったんだろう。
まだまだあの身体に振り回されてるように見えたので、そこを使いこなせるようになれば、破壊力もスピードもさらに磨きがかかり、隙も減り、テクニックも自然ともう一つ上のステージに上がると思う。
ミオシッチ政権の終わりという虚しさと、ガヌーのヘビー級らしいスタイルへの期待で、これからのヘビー級は面白くなっていきそうだ。