UFC262で行われる、チャールズ・オリヴェイラ VS マイケル・チャンドラーのUFC世界ライト級王者決定戦。
チャンドラーは納得として、なぜ暫定王者だったゲイジーやダスティンではないのか?
最強のランカー達を相手にミドル級1位を守り続けている元王者ロバート・ウィティカーの再戦も流れ続けているし、UFCはたまに筋の通ってないことをする。
今回は、勝敗予想というよりこんな流れになるかなというのを話していきたいと思う。
① オリヴェイラ VS チャンドラー
・チャールズ・オリヴェイラ
10年近くUFCで戦い続けている強豪。
UFCデビュー時は確かフェザー級の選手で、独特のリズムと極めの強さが武器の選手だなぁという印象だった。
気づけばライト級に移籍し連勝中。何よりライト級のトップ中のトップである、トニー・ファーガソンに完勝している。
寝技になればどんな局面からでも一本勝ちを狙えるだろう。
打撃も弱いわけではなく、スタンドで戦う事も珍しく無い。むしろスクランブルの攻防になった時、極めが強い分アドバンテージがあるかもしれない。
・マイケル・チャンドラー
彼は世界2番目の総合格闘技団体、ベラトールの元ライト級王者。
レスリングのディビジョン1でオールアメリカンも獲得している、ゴッテゴテのレスリングエリート。
その圧倒的なフィジカルと、世界トップレベルのレスリング技術、バク転なども軽々とやってのける身体能力に、1発で意識を吹っ飛ばすハードパンチを持ち、さらにアグレッシブなファイトスタイルで世界的な人気を持つトップファイターだ。
筆者もとても好きな選手で、個人的にチャンドラーを応援している。
彼自身は白人で奥さんも白人だが、黒人の養子を引き取って育てている。
そういった人格的な部分でも彼の事が大好きだ。同じようなファンは多いと思う。
② どんな流れになるのか
恐らくチャンドラーがプレッシャーをかける所から試合が始まり、終始チャンドラーが前に出る展開になるだろう。
オリヴェイラはリーチが長いため、パンチを当てるためにはチャンドラーは前に出るしか無い。
オリヴェイラは蹴りも多用するため、今流行りのカーフキックやローキック、前蹴りを使うシーンも見られるかもしれない。
特にカーフキックは、レスラーでとんでもなく速い踏み込みを持つチャンドラーの足を破壊するのに適しているため、オリヴェイラがカーフでチャンドラーの足を破壊するゲームプランを持っているか、そしてそれを実行するか、そこにも注目したい。
オリヴェイラはテイクダウンされて下になっても三角締めや腕十字、足関節と必殺の武器を持っているため、下になる事にそこまで抵抗はないだろう。
チャンドラーもそれは分かっているだろうから、あまり自分からテイクダウンに行って寝技で勝つようなプランは実行しないと思う。
チャンドラーのプランはとにかく前に出てプレッシャーをかけてパンチで倒す。これが絶対だろう。これ以外のプランもあるかもしれないが、スタンドでパンチで倒す事が最優先で、それ以外のプランはこのプランを通すためのものでしか無いような気がする。
特にオリヴェイラの極めの強さは知っているから自分からテイクダウンはあまり行かないだろうと思う。
仮にオリヴェイラからタックルに来てもチャンドラーはテイクダウンされない自信があるから、ガンガン前に出てくる展開が予想される。
そしてチャンドラーは、ウェルター級王者のウスマンと同門なので、寝技になっても相手を漬ける技術も高いだろうから、スクランブルからチャンドラーがオリヴェイラを投げたりして寝技になった時に、すぐ立つのではなく相手の動きを潰しながらある程度パウンドを入れたりするだろう。
もし、下からの関節技がうるさかったらその時スタンドに戻ろうとすると思う。
③ まとめ
オリヴェイラのタックルや投げではテイクダウンされず、トップレベルのストライカーとバチバチに殴り合ってきたチャンドラーが打撃もタックルも恐れずガンガン前に出てくる。
それに対して、打撃でもタックルでも明確に優位に立てないオリヴェイラは、カーフキックなどでチャンドラーの足を壊す。あるいはキックとパンチを混ぜながらチャンドラーの意識を散らして強力な打撃を入れて主導権を握る。
もしくは、キックとパンチで意識を散らしてタックルに入る。
ディフェンスされる事は分かっているから、あえてタックルに入りチャンドラーがディフェンスをしてお互いがもみくちゃになるスクランブルの展開に持ち込んで、どこかのタイミングでスタンド状態でバックを取るか、引き込むか、足関節を狙いに行って強引に寝技勝負に持ち込む。
オリヴェイラが組技に行ったら狙う事としてはこの3つだろう。
テイクダウンして自分が上になる事も狙うだろうが、ほぼほぼ実現しない事がわかっているから極めの強い選手が王手をかけれるスタンディングバックか、足関節からの寝技勝負、この展開は試合中起こりうると思う。
チャンドラーとしては、相手が上記のようなプランを取る事は想定しているだろうから、カーフキック対策と寝技対策をしっかりしてくるだろう。
ウスマンとトレーニングしているチャンドラーならオリヴェイラの関節技を潰しながら押さえつけてパウンドで削り、相手の関節技がしつこいなと感じたらスタンドに戻す。この展開も起こりうるだろう。
筆者の予想ではチャンドラーがKOかTKOで勝つと思う。
チャンドラーの一本勝ちはないだろう。
あるとすればチャンドラーのKOかTKO勝ち、オリヴェイラは判定よりも一本勝ちの方が確率は高いと思う。
ただ、オリヴェイラの勢いとスタイル、何より不気味さを感じるので、オリヴェイラが勝ちそうなの気はしている。
チャンドラーが負けるとしたら、カーフキックで足にダメージを負い、動けなくなったところをフィニッシュされる。
もしくはスタンディングバックからチョークなり、下からの三角や足関節なりで一本負け。
チャンドラーが負けうる展開としては、カーフを効かされてからの打撃。
または、キックとパンチで意識を散らされて打撃やテイクダウンへのディフェンスが散漫になって、終始ペースを握られて、チャンドラーが前に出れなくなる展開。
前に出れなくなったらチャンドラーは勝てなくなると思う。
逆にオリヴェイラが負けるとしたら、チャンドラーのプレッシャーに負けて下がったところにパンチを貰って序盤でKOかTKO負け。
もしくはフィニッシュはさせないものの、打撃で効かされて、タックルは潰されて、カーフは対策されて、ズルズル判定まで行く。しかし、これはあまり可能性として高くないと思う。
1番起こりうるのはチャンドラーのKO勝ち、もしくはオリヴェイラの一本勝ちか判定勝ち。
要はオリヴェイラの得意の寝技に持って行きたいが世界トップレベルのレスラーであるチャンドラーをテイクダウンをするのは難しい。
じゃあ打撃で勝てるかと言ったら、あの速い踏み込みとハードパンチを武器に圧力をかけてくるチャンドラーに打撃で殴り勝つのも中々難しい。
チャンドラーを崩すためにカーフや蹴りで意識を散らして主導権を渡さないように戦うしかないオリヴェイラ。
一方のチャンドラーはバックボーンのレスリングが自然とオリヴェイラの寝技対策の一つとなっているため、下手に寝技に付き合わなければ負ける可能性は低い。さらに打撃戦でも1発を持っているチャンドラーの方が有利である。
自分の勝ちパターンに持ち込むのが難しく、相手の勝ちパターンを潰す必要があるオリヴェイラに対し、自分の勝ちパターンをそのまま押し付けて、相手の対策への対策を用意するだけでいいチャンドラー。
この構図はMTGにおける、コンボデッキ対フェアデッキのようなものだ。
ただ、今回の試合は何となく悪い予感がしていて、オリヴェイラが勝ちそうな気がしている。しかし、勝って欲しいのはチャンドラー。
予想として、筆者はチャンドラー有利と思っているし、勝つのもチャンドラーではないかと思っている。
こちらは先の試合より分かりやすい構図だ。
朝倉は路上の伝説と言われる喧嘩屋で、日本でもトップレベルの総合格闘家だ。
クレベルは柔術で凄い実績を残している柔術家であり、ヨーロッパ最大の総合格闘技団体KSWの元王者で、総合格闘技戦績も豊富な世界レベルの強豪である。
この2人の試合は、塩試合になるか、どちらかワンサイドで決着すると思う。
寝技、組技に行きたいクレベルと組技、寝技に行かずに打撃で勝負したい朝倉。やりたい事が正反対なので、こういう試合は膠着することが多い。
ただ、こういうストライカーVSグラップラーは総じてグラップラーに有利がつく。組み付けば勝てる方と、組みつかれたら負ける方では打撃の質も気持ちの面でもかなり違う。
ボクシングの試合を思い返して欲しい。1ラウンド開始のゴングが鳴って、ワンパンチでノックダウンすることなどない。2ラウンド3ラウンドとラウンド重ねていくうちに、必ずクリンチが起きる。
これは、打撃で相手を失神させるより、組みつく方が成功しやすいということだ。
もちろんMMAでは蹴りがあるので、ボクシングほど簡単にクリンチとはならないが、警戒している相手に打撃で失神、あるいはダメージを与えるというのは難しい。
それは格闘技をやっている人間なら誰しも分かっていて、組みつかれたくないなら、組みつかれないように打撃を撃たないといけなくて、それはすなわち打撃の威力が落ちるということだ。威力が落ちるので圧力にならず、相手は怖がらなくなり、どんどん前に出てくる。
こうやってストライカーはグラップラーに負けていくという構図が出来上がるのだ。
そしてクレベル・コイケという選手はいい意味で空気を読まない。
相手がどんなにストライカーだろうとやる事は変わらず、ビビらずに前に出てくる。そして今までKO負けがないほど打たれ強い。
何より世界の強豪と戦ってきたクレベルにとって朝倉がいくら危険なストライカーだとしてもビビらないだけの修羅場を経験している事も強みの一つ。
朝倉が勝つなら1ラウンド序盤で組技、寝技にビビらず打撃でガンガン攻めて倒す。もしくは、距離を取ってヒットアンドアウェイでポイント勝ちをする。
どちらかやと思う。
恐らく2ラウンドでKOとか、一本勝ちするというのはないだろう。
勝つなら1ラウンドに組技や寝技にビビらず攻めまくってフィニッシュする。または、1ラウンドで試合が終わらなかったらヒットアンドアウェイで判定勝ち。
クレベルが勝つなら一本勝ちだと思う。クレベルと朝倉の寝技技術の差を考えると、クレベル有利の判定がつく前に一本勝ちしてしまうだろう。
クレベルは27勝のうち23勝が一本勝ちという脅威のフィニッシュ率を誇っているので、クレベルが判定勝ちするほどクレベルのワンサイドゲームになるなら、判定までいかずに決着するはず。
打撃でKOはあの打撃を見る感じ難しいだろう。正直、打撃はお世辞にも上手いとは言えない。
ただ独特のリズムと距離感で独特の軌道で打撃を放ってくる。
その上まったくビビらずに前進してくるし、撃ち合いになってもクレベルはもみくちゃの状態で強さを発揮するタイプなので、距離を詰めようとするのはクレベルの方だと思う。
⑤ 試合の流れ
打撃を恐れず、しっかり相手を見ることから始まるクレベルに、寝技組技にビビらず速攻をかける事ができれば朝倉の試合になるだろう。
しかし、世界レベルで戦ってきたクレベルは経験も冷静さも引き出しの多さも豊富なため、速攻してきた朝倉を捌いて組んでスクランブルの攻防に繋げていくとも可能だと思う。
クレベルはテイクダウン能力はそこまで高くないので、倒すのは苦戦するかもしれないし、すぐ立たれるかもしれないが、スタンディングバックの状態になればほぼ勝負は決まるだろう。
クレベルのテイクダウンを全部捌き切ってヒットアンドアウェイに徹すれば判定勝ちできるだろうが、問題はクレベルがレスラー系の選手じゃないことだ。
柔術が強いクレベルからしたらテイクダウンできなくても引き込んで自分から下になっても勝てるし、テイクダウンできなくてもバックを取ればチョークなり足関節なりで勝てるからテイクダウンを防がれる事は全く問題にしない。つまり、メンタル面での影響が少ないのだ。
こういうメンタルで自分の勝ちプランを押し付けてくる選手を相手にすると、朝倉の方が疲弊していくのでどんどん勝つ事が難しくなる。
筆者はクレベルの一本勝ちを予想する。
特にスクランブルの展開が多くなればなるほどクレベルのペースになるので、朝倉は徹底して相手に付き合わない事が大事となる。
この2つの大会は、自分の勝ち筋がハッキリしている選手は強いということを教えてくれる大会になりそうだ。