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MMAのバックボーン2

前回に引き続きMMAのバックボーンについて考えてみたい。

今回は打撃編である。

 

 

 

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MMAにおける打撃

MMAは立った状態から始まる。と言うことは、立技=打撃の攻防を優位に進める技術があればその時点で相手よりもアドバンテージを握っている事になる。

 

打撃技術が上回っていれば、打撃によるKOはもちろん、クリンチやタックルに入りづらくさせることができる。

具体的に言うと、間合いやリズムを支配していれば、普段は近い距離からタックルに行くのが遠い距離からになってしまうのでディフェンスしやすかったり、クリンチしてもいい形で脇を刺さされなかったり返したりできるので、組技系の選手からすると試合のペースを握りづらい。

 

特に打撃の威力の部分が強いと相手はそれを警戒してしまうので、タックルに行くタイミングが限られてしまう。

無闇にタックルに行くと膝を合わせられたり、フックやアッパーを撃ち込まれたりする。打撃を怖がって遠い間合いからタックルに行けば防がれてしまうので組技系格闘技出身の人は打撃対策、とくにディフェンス部分はしっかりしていないとMMAで戦いにくい。

 

また、相手がクリンチや近づいてくるタイミングでジャブや関節蹴りやローキックを置く事でクリンチや近い距離にさせないことができる。

 

打撃技術が高ければ、クリンチやタックルに行くタイミングや距離をある程度こちらが支配する、または限定的にする事が出来ると同時に、相手に打撃を警戒させることで相手の試合にさせずにゲームを進めることができる。

 

どれだけ組技や寝技が強くてもこの打撃という部分でアドバンテージが取れないと、組技や寝技の試合に持って行くこと自体が難しくなる。

この打撃によるゲームの支配を最も上手くやっているのがキックボクシングをバックボーンに持つイスラエル・アデサニヤだろう。

他にもバックボーンはレスリングだが、打撃で間合いとリズムを支配して簡単にテイクダウンディフェンスをしてしまうジョン・ジョーンズや、圧倒的な打撃技術と脅威的な反射神経でテイクダウンディフェンス率が高いジョゼ・アルドなどがMMAにおける打撃の重要性を教えてくれる。

 

これがMMAにおける打撃の概念だ。

以下は筆者が思う打撃系格闘技の優先順位だ。

 

ムエタイ

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世界最強の打撃系格闘技の呼び声高いムエタイ

パンチ、キック、肘、膝、首相撲と凡そスポーツで許される打撃技術は全て駆使できるのがムエタイである。

 

MMAに向いている要素として、打撃技術全般を学べることにある。

パンチは勿論、蹴りや肘に膝と何でもござれの技術体系で、カットする肘や倒す肘など細かい技術も多く、首相撲もあるためクリンチの攻防になっても優位に試合を進められる。MMAで使える要素が多い事が理由だ。

 

ローキックとミドルキックと近い距離からの肘でMMAの試合でも輝く部分が多い。

特に蹴りに関しては最強と言ってよく、三日月蹴りや関節蹴りなど変則的な蹴りはないものの、ローキック、ミドルキックで攻撃力としては十分であり、基本的な技術だからこそ対処が困難だったりする。

MMAでは蹴り足を取られてテイクダウンされる可能性はあるものの、一流のムエタイファイターがキチンとテイクダウンを考えた蹴りを出せば掴んだり、蹴りに合わせてタックルに行くことは相当難しい。実際、ジョゼ・アルドエドソン・バルボーザはローキックを多用するものの蹴り足を掴まれる事はあまりなく、蹴りに合わせてタックルをさせる事もほぼない。一流の基本技術は攻略困難なのだ。

 

 

伝統派空手 ≒ キックボクシング

この2つは同列と扱う。

 

伝統派空手

空手は沢山の流派があるが大きく分けると2つに分かれる。

パンチによる顔面攻撃を禁止する代わりに、バチバチに殴り合うフルコンタクト空手

顔面OKだがグローブをつけて撃ち抜く打撃が禁止の伝統派空手

この2つに分ける事ができるがMMAで輝くのは伝統派空手である。

 

なぜ伝統派空手MMAで有効なのか。それは技術体系にある。

相手に打たれずに自分だけ打つことを徹底した技術体系がMMAにアジャストしやすいのだ。

具体的に言うと間合いと打撃の考え方が他の打撃系格闘技と一線を画している。

打撃系のフットワークと言えば某ボクシング漫画の影響でボクシングのイメージがあるが実際のボクシングではフットワークは殆どない。

フットワークは使っているのだが、MMA伝統派空手、テコンドーに比べたら動きは大きくないし、せいぜい位置取りの攻防で使うくらいだ。

しかし、伝統派空手の攻防は殆どこの間合いの攻防と言っていい。遠い距離からノーモーションで一気に踏み込み1発、2発打ってすぐに安全圏に戻る。これが伝統派空手の基本的な動きである。

一度伝統派空手の刻み突きを体験してもらえれば分かるが、いつ踏み込んで来たか全く分からない。気づいたら目の前にいたと言うような感覚になる。

この刻み突きの技術と間合いをコントロールする技術で、たとえリーチが短くても遠い距離で戦う事ができるし、待ち拳という戦い方があるので当然カウンターの技術も高い。

遠い距離からノーモーションで攻撃したかと思えば次の瞬間には安全圏に逃れ、近づこうとすると関節蹴りや足刀で距離を離し、闇雲に突っ込めばカウンターがある。遠い距離なのでタックルにも行けない。クリンチもさせてもらえない。打撃も当たらない。このようにMMAで打撃を行う上で重要な要素が沢山あるのが伝統派空手なのだ。

 

この伝統派空手で代表的なMMAファイターと言えば堀口恭二ティーブン・トンプソン、ブラジルのリョート・マチダ伝統派空手の動きをMMAに適応させ活躍している。

 

メリットばかり話したがデメリットもある。

伝統派空手の動きが強く残っている選手は別のスタイルに変える事ができない事だ。

例えばムエタイ柔術がベースのジョゼアルドは、普段はベタ足でスタンスの狭い構えだが、ピョートルヤンと戦った2ラウンド目は片足を上げてアップライトに構えを変えて2ラウンド3ラウンドを有利に進めた。

 

アルドと同じベースのアンデウソンシウバも試合中に様々な構えをとる。

両手を小刻みに動かしながらスタンスが若干広めの構えから、急にスタンスの狭いノーガードになったり、スタンスを狭くして前手をフリッカージャブの構えでサークリングを繰り返したりする。

 

ジョゼアルドは1ラウンドで自身のローキックで足を骨折した時に打撃で攻めるプランを変更して、4ラウンドまで、テイクダウンして寝技の試合をやりきったこともある。

 

このように、対戦相手や試合の状況、間合いによって構えを変えたり、戦略を変えたりするのがMMAの特徴なのだが、伝統派空手の選手は決まった構え、決まったパターンが確立しており、それを適宜変えることはあまりない。

ティーブントンプソンはその最たる例だろう。伝統派空手の半身の広いスタンスでステップを刻む構えで距離を支配してカウンターと刻み突きからの連打で戦うが、相手がストライカーでもグラップラーでも同じ戦い方しかできない。タックルに行くという選択肢がなく、構えやプランを変えてインファイトで打撃戦をやる選択肢もない。

 

これはリョートマチダや堀口恭二にも当てはまる。自身の戦い方や勝ち方があるため、相手の戦略に対して自身が窮地に陥った時の対処法しか用意できないのだ。

勿論、今回の相手は蹴りが有効だから蹴りを中心に戦おうとかその程度のプランはある。しかし、全く違うプランに変える事は滅多にない。

これは伝統派空手の動きが、伝統派空手の構えからしか繰り出せないためだ。

 

伝統派空手の動きは強力で支配的である一方、スタンスが広く半身で小刻みなステップを刻むあの構えと動きは、タックルしたり、ムエタイのように受けと攻めを両立させやすい打撃の構えに変えたりできず、自身のバックボーンを活かして補助として寝技やテイクダウン対策をすることを選ぶ選手が多い。

 

・キックボクシング

伝統派空手と同立と書いたが、実はムエタイ伝統派空手の方が優っている部分が多い。

しかし、ムエタイにも伝統派空手にもない部分でパンチの攻防により長けている点がある。

ムエタイは蹴りと首相撲中心で、前蹴りやミドルを蹴り合って近くなるとフックやストレート、至近距離になると肘や首相撲の攻防になる。

伝統派空手は遠い間合いから飛び込んでの突き、飛び込んだ相手にカウンターが多く、至近距離でのかけ蹴りなどの変則的な蹴りを使う事が多い。

しかし、キックボクシングの場合は首相撲や肘の禁止やリングがある事で、ムエタイよりも伝統派空手よりもパンチによる攻防が起きやすい。

これがMMAで光る事がある。

特にキックボクシングをバックボーンに持つコーリーサンドヘイゲンやイスラエルアデサニヤはヘッドスリップやかわしながらのカウンターなどが非常に上手い。自身の距離になった時のパンチとキックの攻防はムエタイにも負けていないのだ。

 

寝技や組技に加えて他の打撃技術を学ぶ必要はあるが、やはりパンチの攻防に耐性がある事はMMAではかなり重要な点である。

 

③ ボクシング

ボクシングを単体の格闘技として見た場合MMAではほぼ通用しないが、ボクシング技術はMMAでは最重要科目だ。

ボクシング技術が低いとMMAでアドバンテージを握りにくい。

それは足よりも手の方が隙が少なく、器用に早く動かせるためだ。とくにMMAでは蹴りやタックルなどがあるため、隙が小さくて早くて小回りが効くパンチの技術は、試合の流れを掴む重要な技術になってくる。

しかし、ボクサーはガードやパンチの避け方が蹴りや肘、膝、タックルを想定していない技術なので、バックボーンがボクシングのみの場合MMAに適応するのは、打撃系格闘技の中で最も困難だと筆者は思う。

 

だが、パンチの技術は非常に高いため、MMAではレスリングと柔術と並んで必須科目であると思っている。

レスリング出身の選手はボクシングと同様に足のスタンスが広い構えなので、ボクシングが馴染みやすく、打撃はボクシングで組技と寝技はレスリングでお互いの短所を補えることから、この組み合わせでMMAにいく選手は多い。

 

ボクシング+別の格闘技の相性は非常に良い。

特にレスリングとボクシングを組み合わせた、ボクレスあるいは北米スタイルと呼ばれる戦い方はMMAの一つの完成系と言える。

有名なところでは、カマル・ウスマンマイケル・チャンドラーフランク・エドガーがその代表だろう。

 

ボクシング単体では今のMMAでは通用しないが、ボクシング技術は非常に重要であり、このランクに落ち着いた。

 

日本拳法少林寺拳法、テコンドー、カポエイラ

 

これらは、MMAというより、路上や演舞などの魅せる動きに重点が置かれている。

日本拳法少林寺拳法も金的や目つきを基本技術で学ぶし、指取りや袖や襟、髪の毛をを使った投げ技や関節技などが豊富で、MMAで使える技はかなり制限されてしまう。事実これらの格闘技出身の選手はあまり多くない。

一応テコンドー出身で、ベンソン・ヘンダーソンアンソニーペティス、といった元UFCファイターもいるが、前者はレスリングの猛者であり、後者はムエタイ柔術の技術が非常に高いため、テコンドーを使っているというよりは、テコンドーで培った蹴りの技術が高いだけであり、前者はレスリングを使った塩漬け戦法、後者は柔術を使った寝技での一本勝ちなどで勝利を収めている。

 

これらの格闘技を4番目に置いたのは、競技人口の少なさと、MMAにアジャストできる技術の少なさ、単体のスタイルでMMAに通用しないことでこのランクに置いた。

勿論、弱いとか使えないとか言っているわけではなく、あくまでテコンドーの戦い方、少林寺拳法の戦い方でMMAに活かしにくいということだ。個々の技術は有用なものが非常に多いため、いずれこれらの格闘技から新たなスタイルが生まれてくるかもしれない。

 

・まとめ

筆者的には、打撃技術全般を学べて首相撲を使えるムエタイ。次に間合いとノーモーションの突きやカウンターを有する伝統派空手と、パンチの攻防に耐性があるキックボクシング。3番目にレスリングや柔術と相性のいいボクシング。4番目にその他の打撃系格闘技がつくといった感じだ。

 

どんな格闘技でも使い方と別の格闘技からどんな技術を学ぶかでMMAでの戦い方が変わるのだと思う。

MMAに興味があってMMAを学べる環境にないかたは、まずは近くの何某かの格闘技のジムや道場に通うだけでもよりMMAの面白さが伝わるかと思う。