3度目となる、ダスティン・ポワリエ vs コナー・マクレガー
筆者の予想はマクレガー勝利。
しかし、ものの見事に外してしまった。(笑)
写真は撮れ次第載せます!
① 前戦と展開予想
前回の試合を見る限り、カーフで崩された所以外は五分五分かマクレガー有利に働いている部分があった。
まず打撃だが、これは五分五分か若干マクレガーが優勢だったように見えた。
特に前手のパンチが良く当たっており、金網に追い込むシーンもあり、やはり打撃ならマクレガーがアドバンテージを取れるのかという印象である。
組技になると金網に押し込まれたり、テイクダウンされたり、マクレガーの弱い部分も見えたが、すぐに立ち上がり体制を入れ替えて金網に押し込み返したりと、極端な差があるようには見えなかった。
ポワリエもディフェンスが上手く、打撃を貰っても身体の力みがないため、重いダメージが残らないように見える。
ただ、身体が柔らかく、ブロックしても打撃を貰ってもダメージを受け流してるように見えるが、パッと見は効いてるようにも見えるので印象としては良く無かったのかなと思う。
最終的にはマクレガーからのダメージを抑えながらカーフで崩したポワリエが勝利した。
ここから見えるのは、カーフさえなければ打撃で若干有利なマクレガー。
組技寝技はほぼ五分五分。
そういう構図に筆者は見えたので、マクレガー勝利を予想した。
しかし現実は斜め上を行く。
② 試合展開
フェザー級時代のようにバックスピンや蹴りを多用するマクレガー。
これはこのブログでも予想した内容通りである。
ローキックを多用するマクレガーに、ディフェンスをしながらしっかり様子を見ているポワリエという立ち上がり。
この時のマクレガーの蹴りはカーフというより膝上を狙ったローキックに見えるのだが、蹴りを軸に試合を組み立てようとしているのが分かる。
しかし、途中でポワリエのコンビネーションがヒットし、マクレガーが嫌がり少し下がったところに、ポワリエが前に出て圧力をかけていき、パンチを嫌がってクリンチしてきたマクレガーにテイクダウンを成功させる。
ここから予想外だったのは、前回のようにマクレガーがすぐに立ち上がれずにグラウンドでコントロールされた事だ。
ポワリエはグラウンドで相手を漬ける技術は高くないと思っていたのでこれは予想外で、この技術を高いレベルで持っている事がわかっていれば事前予想も変わっていただろう。
このポワリエがテイクダウンして寝技のゲームプランを取ることは、事前に予想した通り。
予想外だったのは、グラウンドの漬ける実力が相当高いレベルにあったことだ。
ここからかなり長時間グラウンドで支配され肘も入れられてマクレガーはかなり劣勢になる。
1ラウンド終盤、ようやくマクレガーが立ち上がり、左の前蹴りからストレートを打つ瞬間に左脚が骨折しTKO負け。
3回目の決着戦はポワリエのTKO勝ちとなった。
③ 解説
主に2つのポイントが勝敗を分けた。
・打撃戦の主導権
前回ほどマクレガーが打撃の主導権を握れてなかった。
マクレガーは蹴りの手数こそ多く、ヒットもさせていたが、ポワリエの方が間合いを良く理解していた。
左右のフットワークをよく使い、間合いを調整し、パンチの距離に入った瞬間にパンチでアドバンテージを取ろうとしている。
特に前足の位置が重要で、前足が重なる距離はパンチの間合いであり、お互いそこに入った時にパンチの撃ち合いをしていた。
オーソドックス(右利きの人は左手、左足が前にくる構え)同士なら、前手が左なので左に左に円を描きながら動くのが基本的な動きで、当然構えが逆同士のサウスポー(左利きなら右手右足が前に来る構え)なら前手が右手なので、右へ右へ回って行くのがいいとされているが、ポワリエは逆に動いて、外を取る動きを見せていた。
これにより、外に一瞬小さくステップした後、すぐさま内をとる動きをすることで、パンチを有利に入れるポジションを手に入れていた。
このポジションを取られたことでポワリエのワンツーを貰ってしまい、下がった事でポワリエに前に出るきっかけが生まれた。
そこでさらに悪手だったのは、間合いを詰めたポワリエに膝蹴りを放った事だ。パンチの間合いではあるものの、肘や膝の距離ではないし、相手はしっかり見ながら体幹もぶれずダメージのない状態で膝蹴りをしても、自身のバランスが崩れ、パンチを被弾しやすくなるだけであり、結果その後のパンチのコンビネーションに対応できず、自らクリンチに行ってテイクダウンされてしまった。
打撃の主導権を握れなかったのは、ポワリエのディフェンス力と、内を取るべきなのに内を取られてしまったこと。
そして、内を取った瞬間の攻勢に出るスピードがとても速かったこと。
これが一つ目のポイントだと思う。
・グラウンド力の差
これは筆者も知らなかった部分だが、ポワリエは基本的にボクシングと蹴りで勝負し、隙があればテイクダウンをして、相手の意識を散らしながらペースを握っていくスタイルだと思っており、前王者のヌルマゴメドフのように相手をグラウンドで塩漬けにしながらパウンドを、しかもあれだけ長時間続ける事ができるとは知らなかった。
あるいはマクレガー戦に備えてスキルを上げたのか、とにかくグラウンド&パウンドのクオリティが非常に高かった。
結果はマクレガーの骨折だったが2ラウンドに入っても同じような展開が続いただろう。
打撃の間合いを掴む力とグラウンド力で明確に差が出て、ポワリエの完封に繋がったと思う。
④ まとめ
3回目の今回はポワリエの完封勝利で幕を閉じた。
恐らく何度やっても同じ結果になるだろう。それほど力に差が生まれていた。
スーパースターになって引退した選手と、最強と言われる選手と凌ぎを削り続けて勝ち続けた選手の地力の差が出た形になった。
やはり、死線を潜り続けてきた選手は強い。チャンピオンのオリヴェイラもポワリエと殆ど同時期にUFCに参戦した古豪であり、この2人のタイトルマッチはとても楽しみなものになるだろう。
ここで敗れたマクレガーはかなり厳しい状況にある。
足も骨折しているし、何より"コナー・マクレガー"というブランドが失墜してしまった。ここからかつてのような栄光を手にするのは並大抵の事ではない。
幻想は打ち砕かれてリアルな強さが浮き彫りになってきた。
これからのUFCはスーパースターという存在を、幾多の強敵達と戦い続けてきた歴戦の強者が打ち砕く時代に突入していくのだろう。