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ウスマンvsエドワーズ

 

 

 

衝撃であった。

LINEニュースで上がるほど世界に激震が走った試合である。

 

UFC無敗の15連勝中、キャリアにおいて一度もテイクダウンを奪われたことがなく、UFC世界ウェルター級王座を5連続防衛中、パウンド・フォー・パウンド1位の絶対王者、カマル・ウスマンが衝撃の逆転KO負け。

 

誰が予想しただろうか。

世界中の誰もがウスマンの勝利を予想し、凄まじいキレと伸びのあるジャブとストレートでKOするか、ケージレスリングでコントロールして判定勝ちするかの2択を予想していただろう。無論筆者もだ。ウスマンが勝つのは確定。あとはどう勝つか。そこに焦点が当たった試合をエドワーズは見事に覆した。

大アップセットである。

 

そもそも1Rから凄かった。テイクダウンディフェンス率100%を誇る王者ウスマンからテイクダウンを奪うばかりかマウントまで取り、あまつさえバックまで取るのだから大したものである。さらに足のロックも強固で、あの腹の位置でロックされたら絶対逃げられない。

1Rはエドワーズが優勢で終わったものの、2Rから王者ウスマンの逆襲が始まる。ケージ際に追い詰めてガードが高ければレスリングで削り、ガードが低くなるようならパンチのラッシュを浴びせるという形で、とんでもないプレッシャーで追い詰め始めた。2Rはエドワーズもガードを固めて、テイクダウンも切ることが多かったが、3Rからは切れてたタックルも切れなくなり試合を支配され始め、5R残り1分まで完全に支配されていた。

残り1分というところで、サウスポーの構えから左のローキックをエドワーズがヒットさせ、右のジャブでウスマンを自身からみて左に動かし、左ストレートを打つと同時に左ハイを繰り出した。

左ストレートを避ける為にウスマンが自身からみて右にダッキングした所に、同時に飛んで来ていた左ハイが突き刺ささり失神した。

試合は完全に別物となり、ウスマンの手から勝利が転がり落ちてエドワーズの手が受け止めた形となった。

 

記録に残る逆転劇である。

 

思えばエドワーズはこの試合ハイキックを使っていなかった。序盤からローや間接蹴りばかりでハイを出しておらず、それが故に最後に突き刺さったのだ。

天晴れ。これはもうエドワーズが凄い。確かにまぐれではあるものの、ウスマンのダッキングの癖を見抜き、しっかりローや間接蹴りなど低い蹴りを意識させて、ジャブで動かしながらダッキングの癖をついた見事な攻撃だった。

全てが作戦とは言わないが、ウスマンが思ったよりグラウンドが出来なくて、かつウスマンのジャブとストレートをかなり警戒しながら戦い、左ハイの伏線を張り続けたエドワーズが凄い。

 

・敗因

ウスマンの敗因はいくつかある。

① 寝技の対処が悪い

② 寝技の選択肢が乏しい

③ スタイルの弱点

④ メンタルの動揺

筆者が見ただけでこれだけある。

 

まず、初めてテイクダウンされて動揺していたからか、下になった時の寝技の対処が非常に悪い。とてもブラジリアン柔術黒帯とは思えない悪さである

そもそも投げられた時点で有利なポジションを奪わせないために、自身が有利を取り返せる投げられ方に切り替えないといけない。

投げられてる最中に何もしなかったため、エドワーズに投げられながら既にマウントを取られていた。

今回のマウントは、寝技になって奪われたのでなく、投げている最中に、ウスマンがなんの抵抗もしなかったことでエドワーズは投げながら胴体に足を回すことができた。これは、エドワーズが上手くて冷静だったとも言えるが、対処としては最悪である。まぁ、投げられたのが初めてなので仕方ない事かもしれないが、それにしても動揺しすぎである。

更にマウントを取られた後も最悪で、立ち上がるためにバックを取らせるのは確かによくある事だが、それはバックから立ち上がれる技術と自信があってこそだ。それも同じ階級で柔術世界王者のギルバート・バーンズにバックを取られて寝かされるのなら分かる。しかし、相手は寝技の強豪ではないエドワーズだ。それを相手にしてあの動きは、ハッキリ言ってグラウンドのグラップリング技術が低いと言わざるを得ない。

つまり、バックを取らせて立ち上がり、スタンディングバックから脱出するという流れを作れてない時点で、バックを取らせたリスクを回収できてないのだ。

 

しかし、それでもまだバックを取られたまでなら何とかなる。しかし、ロックまでさせてはダメだろう。

特にロックはロックでもお腹の位置が最悪である。あの位置では、身体を反転させて上を取り返すことが非常に厳しい。首を気にしてポジショニングが疎かになっていたのだろう。

 

②の寝技の選択肢の乏しさについてだが、上を取った時の選択肢があまり多くない。確かにテイクダウン能力は高く、押さえつける力もあり、パウンドも強烈である。まさに必殺のグラウンド&パウンドであり、ウスマンの大きな武器の一つだ。しかし、立たれたら寝かせばいいと思っているからか、押さえつけて殴るまでは上手くても、自分から有利なポジションに行く、または相手のトランジションを防ぐというところにあまり重きを置いていないように見える。

事実、ウッドリー戦もかなりの回数立たれてたし、今回も上こそ取るもののしっかりしたパウンドは打てず、ダメージを与えれなかった。

つまり、ウスマンの寝技の選択肢というのは、基本的にテイクダウンして、オープンガードかハーフガードのまま押さえつける、隙があれば殴る、これしかない。有利なポジションに行こうとしたり、相手のトランジションを防いだり、サブミッションを仕掛けるという選択肢がないのだ。

そのため、相手もある程度抵抗する事ができるので、立つ事も比較的簡単である。これがGSPならこうはならない。相手のトランジションにカウンターでサイドポジションやマウントを取ったりしてくるが、ウスマンにそれはないので、下の相手は何もビビらず隙を作れる。

ここがキーポイントだ。グラウンド&パウンドは強烈であるものの、サブミッションがなく、トランジションがなく、トランジションを防がない。これによってエドワーズも寝かされるのがあまり怖くなかっただろう。むしろ途中からテイクダウン取られてもいいように見えた。

ウスマンはボクシングが非常に上手く、特にジャブとストレートは対応するのが困難である。ウスマンのレスリング力が高いので、抵抗するより下から立つ方が簡単と捉え、タックルを切るより打撃の警戒を上げていたように見えた。

事実、エドワーズは金網際でのラッシュこそ何度か受けたものの全てガードしていたし、ジャブとストレートはあまり貰わないようにしていた。

 

④のスタンスの広いボクシング&レスリングの弱点である、蹴りを使われたこと。序盤からエドワーズは徹底的に下への蹴りが多かった。ローや間接蹴りで下を攻めていたのはもはやセオリーと言える。そして一度も見せていなかった、ハイキックを入れる。下の蹴りと反応しやすい左ストレートからのハイキックはボクレスの弱点を上手くついた攻撃と言える。

 

そしてメンタルの動揺。

初めてテイクダウンされた事により、ケージレスリングが多かった。最近はボクシングで勝つ事が多かったため、あまり見かけなかったが故に、尚更ケージレスリングが多く感じた。

実際有効な作戦でエドワーズも消耗していたが、少しムキになりすぎていたように見える。もう少し出力をセーブしとけば、最後の左ハイもあるいは反応できたかもしれない。

 

まとめると、初めてテイクダウンされた動揺により、エドワーズにとって最高の形で投げさせてしまい、マウントやバックを取らせてしまった事で、ムキになった。

ムキになる事で、最近減っていたケージレスリングを多用し、自身もスタミナを消費することに繋がった。

そして寝かしても、ポジショニングを有利にしたり、サブミッションがないため、フィニッシュできず、また有利なポジショニングを取ろうとしないため、強いパウンドが出来ず、ダメージを与えれなかった。

ダメージを与えれなかった事で、エドワーズに寝かされてもフィニッシュされない確信を与えてしまい、エドワーズ「打撃の警戒のみでいいと思われた。

そのため終盤までエドワーズはスタンドでも寝技でもダメージを負わずに冷静に戦う事ができた。

序盤から植え付けられた蹴りは下という意識とダッキングの癖を見抜かれて左ハイを貰うハメになった。

 

こんな感じだろうか。

ウスマンは強いがやはり弱点もある。

寝技の下の対処が悪い。

寝技の攻撃の選択肢が乏しい

動揺したメンタル

この辺を直せばより一層強くなるだろう。

 

今のままでは、上を取ってもポジションの維持が最優先で、有利なポジションを取る事やサブミッションがないため、相手は好きに動けてしまう。そのため寝技が上手い選手なら打撃だけを警戒すればいいと思われてしまう。

バーンズのように大振りならいいが、エドワーズのようにジャブを貰わないように丁寧にスタンド勝負をされたら厳しい戦いになる。それが明白になった試合となった。

 

一方エドワーズ側は、ジャブとストレートの対処をしっかりする、ケージレスリングでスタミナを消耗しすぎないようにする、ケージレスリングの技術を上げる。この辺を改善するだけでかなり違ってくるだろう。

ジャブとストレートさえ気をつけてスタンドで必ずイニシアチブを取る。これを意識すれば、スタンドで優位に立つ=ウスマンはケージレスリングで削るか寝技に持ち込むしかない=ケージレスリングのスタミナ消耗を改善すれば寝技の対処だけ考えればいい=寝技のサブミッションがない、トランジションがないなら何とでもなる。

このようなフローチャートが出来上がる。

 

やはり回避不能なほどの圧倒的な攻撃力が必要であり、そのためには打撃か柔術が高いレベルでできないといけない。そのことを思い出させる試合だった。

 

 

 

 

 

ウスマンのグラップリングディフェンスに